死因贈与とは(1)

2021.11.09 | コラム

 「遺言事項⑦ 遺贈とは(1)」のコラムで、死因贈与について触れましたのでここで解説しておきましょう。


 死因贈与とは、読んで字のごとく、死亡を原因としてする贈与のことです。

 例えば、「一郎の死亡を条件として、二郎に〇〇の土地を贈与する」といった契約内容になります。


 死因贈与には、単純に贈与者(贈与する人)の死亡を条件として、受贈者(贈与を受ける人)に財産を贈与する契約の他にも、「負担付死因贈与」や「始期付所有権移転仮登記」があります。


1.負担付死因贈与

 贈与は、基本的には無償で財産の譲渡をするものです。

 しかし、贈与は合意に基づく契約によって成り立ちますので、受贈者に何らかの負担・義務を負わせることも可能です。

 例えば、「死後に財産を贈与する代わりに、受贈者は、生前に贈与者の介護をする」といった内容が考えられます。


 ところで民法554条は、死因贈与について、その性質に反しない限り遺贈に関する規定を適用すると定めています。

 また民法1022条は、遺言者はいつでも遺言の撤回をすることができると定めています。

 つまり、死因贈与においても、原則として贈与者はいつでもその撤回をすることができるのです。


 ただし、これが負担付死因贈与であれば、自由な撤回が認められない場合があります。

 上記の例で言えば、負担付死因贈与の契約に従い、長年受贈者が贈与者の介護に努めてきた場合です。このような状態で撤回を認めれば、受贈者の介護の苦労は水泡に帰すことになってしまいますので、公平さを欠きます。

 判例も負担付死因贈与に関して、「受贈者が負担の全部、またはこれに類する程度履行した場合には、特段の事情がない限り撤回することができない」としています。

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