限定承認とは

2021.10.02 | コラム

 限定承認とは、プラスの相続財産を限度として、マイナスの相続財産を引き継ぐ手続のことをいいます。


 「相続放棄とは」のコラムでは、相続財産の調査の結果、負債などのマイナスの相続財産の方がプラスの相続財産を超過していた場合の手続として、相続放棄手続をご紹介しました。

 しかし稀に、相続財産を精密に調査してみても、プラスの財産が多いのかマイナスの財産が多いのかよくわからない。といったケースがあります。

 相続放棄の手続期限である「自己のために相続の開始があったことを知ってから3か月」の時期が迫っているといった状況では、相続放棄をするか否かの決断に最後まで迷われてしまうでしょう。

 このように、相続財産が複数あって、不動産や株式などプラスの財産が多くある一方、借り入れなどのマイナスの財産も多くあり、プラスかマイナスかの判断が3か月以内にできない場合に取りうる手続きが「限定承認」です。


 限定承認は、亡くなった人(被相続人)の残したプラスの相続財産を上限としてマイナスの相続財産を引き継ぐ制度です。つまり、結果としてマイナスの財産が超過していたとしても、相続人が元から個人で有していた財産には影響が及ばないのです。当然、結果としてプラスの財産の方が多ければ、被相続人にお金を貸していた人(債権者)などに返済をした後で、相続人がプラスの財産を引き継ぐことができます。

 便利な制度である限定承認ですが、いくつかの注意点があります。解説していきましょう。


1.家庭裁判所に対して手続をしなければならない。

 相続財産の処理が複雑になる限定承認の手続は、家庭裁判所に対してしなければいけません。


2.期間制限がある。

 相続手続に大きな影響を与える限定承認には、その手続の期間制限が設けられています。具体的には「自己のために相続の開始があったことを知ってから3か月以内」という民法の規定があります。


3.相続人全員でしなければならない。

 ここが相続放棄とは大きく異なる点です。相続放棄の場合であれば、相続人が各自で手続できましたが、限定承認をする場合には相続人全員の合意のもと手続を進めなければなりません。相続人同士できちんとした話し合いが必要になるのです。

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