対抗要件とは(2)

2022.06.10 | コラム

 さて、不動産を購入しようと思った場合に、所有権が移るタイミングとは一体いつになるのでしょうか。売買契約書を取り交わした時なのか、買主が売主に購入代金を支払った時なのか、それとも登記記録が書き換えられた時なのか。

 実は、我が国における売買の成立、すなわち所有権が移るタイミングとは、「売買意思の合致」の時だと規定されています(民法555条)。つまり、売主が「この不動産をこの金額で売ります」と約束し、買主も「わかりました。その不動産をその金額で買います」と約束して売買意思の合致があれば、この時点で対象不動産の所有権が買主に移転するというわけです。

 売買契約書を取り交わすことも、購入代金を支払うことも、登記申請をすることも、所有権を取得する最低条件ではないのです。


 ただし、現実問題としましては、後の紛争防止のための証拠、証明書として不動産売買契約書を作成するのは世間常識ですし、その契約書内において、「本件物件の所有権は、売買代金の全額が売主に支払われた時に、売主から買主に移転する」といった特約(当事者同士が同意の上で契約に新しく付ける条件)が組み込まれることが通常です。

Page Top