まず、推定相続人とは、被相続人が現時点で亡くなったとすれば相続人になるはずの者のことです。

　そして、推定相続人の廃除とは、被相続人の意思によって推定相続人の相続権を失わせる制度のことを言います。

　前回のコラム「相続欠格とは（１）～（５）」では、同じく相続人の相続権を失わせるという「相続欠格」制度についてご説明をしましたが、こちらとの大きな違いは、相続欠格が「相続秩序の侵害を許さないという公益性による制度」であったのに対し、推定相続人の廃除は「被相続人の意思の尊重による制度」であるということです。つまり、推定相続人の廃除は被相続人のためだけにある制度だと言えます。

　これは例えば、相続欠格が被相続人による相続欠格者の宥恕（赦すこと）を受け付けない制度であったのに対して、推定相続人の廃除は被相続人による取消しが可能な制度であるという点において、その違いが表れてきます。